狡猾な王子様
翌日は言うまでもなく気が重くて、午後になる頃にはため息をつかないようにすることに必死になっていた。


暗い表情を見せればまた家族に心配を掛けてしまうし、なによりも無理にでも笑っていなければ泣きたくなってしまいそうだった。


こんな日はいつもどんよりとした天気ばかりだったのに、今日は清々しいほどの快晴で、視界に広がる空には雲ひとつ見当たらない。


いっそのこと雨でも降ってくれれば憂鬱な顔をしても違和感がなかったのかもしれないのに、こうも綺麗な空模様だとため息ひとつ零すことすら許されないような気持ちになる。


そのうえ、今日に限って配達先は木漏れ日亭だけで、英二さんに会うまでの時間を引き延ばすことすら叶わなかった。


「改めて振られたら、髪でも切ろうかなぁ……」


自嘲混じりに呟いたけど、髪なら切ったばかり。


彼からもなにも言われなかったからすっかり失恋したつもりだったし、ずっと美容室に行けていなかったこともあって、奇しくも昨日の夕方に馴染みのお店に行ってきたのだ。

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