狡猾な王子様
もともと癖っ毛の私の髪は、七センチほど切ってボブにしたことでフワフワと踊っている。
馴染みのお店の美容師さんは五十代のおばさんで、田舎街にしてはおしゃれに敏感で気さくな人柄の彼女に痩せたことを褒められ、『どうせならいつもより短くしてみない?』と普段よりも短く仕上げられてしまった。
何年もミディアムボブにしていたから昨夜はなんとなく落ち着かなかったし、美容師さんに『癖っ毛のおかげでいい感じにゆるふわ』と言われた時にはなぜか不安を覚えたけど、秋ちゃん以外の家族からは好評でホッとした。
ただ、今はそんなことがどうでもよくなっているくらい余裕がなくて、あと一分もしないうちに着くであろう木漏れ日亭がどんどん近づいていることが、とにかく憂鬱で仕方なかった。
ブレーキを踏んでしまいたくて、なんなら引き返したくて、いくつもの鉛を落とされたのかと思うほど心が重い。
それでもなんとか運転を続けて駐車場に車を停めると、自分自身を奮い立たせるように深呼吸をしたあとで車から降りた。
馴染みのお店の美容師さんは五十代のおばさんで、田舎街にしてはおしゃれに敏感で気さくな人柄の彼女に痩せたことを褒められ、『どうせならいつもより短くしてみない?』と普段よりも短く仕上げられてしまった。
何年もミディアムボブにしていたから昨夜はなんとなく落ち着かなかったし、美容師さんに『癖っ毛のおかげでいい感じにゆるふわ』と言われた時にはなぜか不安を覚えたけど、秋ちゃん以外の家族からは好評でホッとした。
ただ、今はそんなことがどうでもよくなっているくらい余裕がなくて、あと一分もしないうちに着くであろう木漏れ日亭がどんどん近づいていることが、とにかく憂鬱で仕方なかった。
ブレーキを踏んでしまいたくて、なんなら引き返したくて、いくつもの鉛を落とされたのかと思うほど心が重い。
それでもなんとか運転を続けて駐車場に車を停めると、自分自身を奮い立たせるように深呼吸をしたあとで車から降りた。