狡猾な王子様
佐武さんがいなくなったのと同時に室内は静まり、恐る恐る英二さんを見ると、項垂れるように俯く姿がそこにあった。


少しして、まるで我慢していたかのような大きなため息が落とされ、彼がゆっくりと顔を上げた。


必然的に目が合い、思わず英二さんに見入ってしまいそうになったけど……。


「あ、あのっ……!私、行ってきます!」


悩んでいる時間がないことはわかっていたから、抱いたばかりの決意の邪魔をする迷いと戸惑いを強引に払い除けて、言い終わるよりも早く段ボール箱をカウンターテーブルに置いた。


「え?」


「すみません!すぐに戻りますから!」


瞳を見開いた彼を余所に踵を返すと、勢いよく店内を飛び出した。


別に、わざわざ追いかけなくてもいい。


このままなにも言わずにやり過ごしたとしても、悪いことをしているわけではないのだから。


だけど……。


「佐武さん!」


なぜかそれでは納得できない私がいて、不安と緊張に苛まれながらも走り、悲しげな後ろ姿を呼び止めた。

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