狡猾な王子様
「そのお茶、よく行くショップの新商品らしいんだ。香りに惹かれたんだけど、甘すぎなくていいかなって思って」


ふたりきりの室内というのは、こんなにも静かなものなのだろうか。


賑やかな家庭で育った口下手な私は、同性でも異性でも家族以外の人とふたりきりになるのが苦手だった。


「そ、そうですね……」


しかも、その相手が英二さんであることが緊張を増幅させ、美味しいと感じていたはずのブラックチェリーティーを飲んでみても味がわからなくなっていた。


「緊張しないで。……って言っても無理だよね」


苦笑する彼に「すみません」と零せばますます困ったような微笑を向けられて、本当にどうすればいいのかわからなくなっていると、すぐ傍から深呼吸ともため息とも取れる呼吸音が聞こえてきた。


「少し待ってから話そうかと思ってたんだけど、お互いに緊張感が強くなるだろうから本題に入るね」


意を決したような口調につられて思わず右側を見ると、あっという間に真剣な眼差しに捕らえられてしまった。

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