狡猾な王子様
「いつか、伝わるといいですね」


思わず口にしていた言葉は、心から感じたことだった。


親の気持ちなんて私にはわからないから、親目線で見れば自己中心的な台詞なのかもしれないし、英二さんの決意は彼の家族を悲しませているのかもしれないけど……。


変わり始めた関係がなにかをもたらしてくれるような気がしているから、英二さんと家族の思いが繋がる可能性はきっとあるはず。


だから、例えどれだけ時間がかかってしまったとしても、彼の言葉が届く日がくることを願わずにはいられなかった。


「うん。すぐには無理だろうけど、今までの時間に比べればどうってことないから、ちゃんと向き合っていくよ」


決意を紡ぐ英二さんの表情は、雲ひとつない空のように晴れやかだった。


もともと穏やかに微笑む人だったけど、まるで心を許すかのように屈託のない瞳で笑うところは初めて見る。


嬉しくなった反面、私は彼のこの笑顔をずっと隣で見続けることはできないから、せめて今だけは独り占めしようと心の中で呟いた。

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