狡猾な王子様
「正直、会った瞬間に心を乱された。数年経っても気持ちが褪せてないことに驚いたし、戸惑いもした……。それまでに付き合った人たちと続かなかった理由も、嫌と言うほどに思い知らされたよ」


瞳を伏せた英二さんが切なさを滲ませて笑うから、聞きたくない話だったのに同情めいた気持ちが芽生えてきて、泣きたくなってしまった。


「初めて来た時はすぐに追い返したけど、一ヶ月後にまた顔を見せたかと思うと定期的に会いにくるようになって、そのうち強引に居座るようになったみちるを突き放すことができなくなっていったんだ」


彼がどれだけみちるさんのことが好きだったのか、ひしひしと伝わってくる。


本音を聞くのはつらいのに、英二さんの中にある恋情を知れたことで安堵のようなものを抱く私もいた。


体だけの関係を重ねてきたことを知った時は、その心情を思うと虚しさしか残らないと思えて悲しかったけど……。


良くも悪くも人間らしさと本音を見せてくれている彼の心が、今は少しだけ近くなったような気がするから。

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