狡猾な王子様
なかなか答えない私を見兼ねたように、英二さんが前を向いたまま口を開いた。


「時間は大丈夫?」


「はい」


「門限とかあるのかな?」


「え?門限なんてないですけど」


「それはよかった」


「門限を破ったらお兄さんたちに叱られるからね」と微笑んだ横顔は、どこか悪戯っぽい雰囲気を纏っている。


和ませてくれたのだというのはすぐにわかって、彼につられるようにクスッと笑っていた。


「たしかに両親よりも兄たちの方が過保護ですけど、さすがに門限を決められるような歳じゃないですから」


「歳どうこうより、冬実ちゃんはきっとすごく大切に育てられてると思うから、俺が父親なら門限を決めたくなるよ」


「末っ子だから皆に可愛がってもらえましたけど、父は意外と家族の中で一番寛大なんですよ」


寛大と言うよりも、お兄ちゃんたちが過保護だったから、お父さんが言おうとしていたことは全部先を越されていただけなのかもしれないけど……。


「私の門限も父じゃなくて兄たちが決めてましたし、父にはあまり言われたことがないくらいです。それに、父は優しいですし」


考えてみれば叱られた記憶もほとんどなくて、やっぱり一番寛大なのはお父さんだと思った。

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