狡猾な王子様
「そっか。それなら、今後も安心かな」


まるで独り言のように呟かれた言葉は、どこか意味深だった。


大人同士なのに、家族に干渉されてはいい気はしないし、面倒だろう。


「あのっ……」


そんな風に受け取った私は、控えめながらも慌てて切り出し、誤解されないような言葉を探した。


「ん?」


「私は末っ子で唯一の女の子ですけど、そんなに厳しく育てられたわけじゃないですし、英二さんにご迷惑をお掛けしないように気をつけますから」


「え?」


「だから、心配しないでください」


不安の中でもなんとか笑顔を見せた私に、英二さんはきょとんとしたあとで小さく吹き出した。


「違う違う。冬実ちゃんはたぶん誤解してる。俺、そういう意味で言ったんじゃないよ」


赤信号で車が停まり、彼が私の方を向く。


「一応ちゃんと言っておくけど、面倒臭いとか思ってないよ?うーん、なんて言うかさ……」


英二さんは信号をチラチラと気にしながら考えるような素振りを見せ、程なくして少しだけ真剣な表情になった。


「いつか、冬実ちゃんの家族に挨拶に行く時のこと考えてただけ」


そして、彼がどこか照れ臭そうな笑みともに、そんなことを言った。

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