狡猾な王子様
「……え?」


「気が早すぎるのはわかってるんだけどね」


英二さんは、驚く私の気持ちを察するように苦笑しながらそう前置きしたあと、青信号で進み出した前の車を追った。


「でも、お世話になってる仕入れ先の娘さんと付き合ってるわけだから……。俺たちの気持ちも大切だけど、早い段階でちゃんとしておいた方がいいとも思うんだ」


そんなことまで考えてくれていたことは嬉しいけど、私たちは付き合ってからたったの一ヶ月しか経っていないし、なによりも今後どうなるのかなんてわからない。


もちろんずっと一緒にいたいけど、まだ不安もたくさんあって、それを叶えられる自信なんてない。


幸いにも今のところ喧嘩も不満もないとは言え、私は彼の過去と上手く向き合えたというわけではないし、私がずっと好きでいられたとしても振られてしまう可能性だって大いにあるのだから。


「で、でも……」


「冬実ちゃんの気持ちは尊重したいし、もちろんタイミングについてもよく話し合いたいと思ってる。それでももし、冬実ちゃんが納得できないのなら、冬実ちゃんの心が決まるまでちゃんと待つよ」


不安だらけで英二さんへの戸惑いを隠せずにいると、彼が前を向いたまま悩ましげに微笑んだ。

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