狡猾な王子様
「挨拶って言うとすごく先のことまで考えてしまうだろうけど、俺としては仕事上の関係があるのにちゃんと挨拶もせずに付き合ってるのは筋が通らないような気もしてて……」


まだ気持ちが追いついていないけど、英二さんの言葉に耳を傾ける。


「だから、交際宣言って言うかさ。真剣だからこそご家族にちゃんと挨拶をして、改めて仕事としても個人的にも冬実ちゃんとの関係を続けていけたらいいな、と思ってるんだ」


そのひとつひとつから誠意が見え、彼なりに真剣に考えてくれていることがよくわかった。


不安も戸惑いもあるけど、こんな風に言われて嬉しくならないはずがない。


「でも、気持ちだけが先走っても意味がないし、今すぐってわけじゃないから、そんなに悩まないでね」


それを必死に隠した胸の内では喜びが溢れ、さらにはキュンキュンと鳴いていた。


気遣ってくれる英二さんへの気持ちが溢れてしまいそうで、「まだ言うつもりなかったんだけどな」と苦笑する横顔がただただ愛おしい。


「まぁ、とりあえずさ……安心って言ったのは、優しいお父さんだと殴られずに済むかなって」


彼は先ほどの言葉の意図を説明しながら冗談めかして微笑んだあと、再び真剣な面持ちになった。

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