狡猾な王子様
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「そろそろ寝ようか」
「はい……」
答えた声は、微かに震えていた。
なんとなく観ていたテレビが消されると、妙に静けさが浮き彫りになった。
決めた覚悟はまだ褪せてはいないけど、どうしたって緊張してしまう。
「冬実ちゃんはベッド使ってね」
すると、そんな私の気持ちを見透かすように、英二さんが優しく微笑んだ。
「一緒だと緊張して寝れないだろうから、俺は下のソファーを使うよ。冬実ちゃんはここを自由に使って」
「でも……」
「大丈夫だよ。もう寒くない季節だし、下で寝るのは慣れてるから」
彼は、自分の気持ちを上手く口にできない私が、きっと気を遣っていると思ったんだろうけど……。
「あのっ……!」
そうじゃないと伝えたくて、咄嗟に口を開いた。
「違うんです、そうじゃなくて……」
視線を彷徨わせながらも、必死に言葉を探す。
だけど、こんな時になんて言えばいいのかわからない私は、最適な台詞を見つけられない。
「どうしたの?」
少しの沈黙のあと、英二さんが私に視線を合わせて、優しく微笑んだ。
そんな彼を目の前にして、ふっと心が軽くなった気がした。