狡猾な王子様
そっか……。そう、だよね……。


最適な台詞なんかじゃなくていい。


だって、どんなに不器用でもぎこちなくても、英二さんはきっと私の言葉に耳を傾けてくれるから……。


「あの、英二さん……」


「うん?」


「私、できてます」


震えそうな声で小さく伝えれば、彼は一瞬言葉を失ったように目を見開いたあとで、戸惑うように私を見た。


「えっと、それはその……」


「はい……。そういう覚悟、です……」


不安と緊張と恥ずかしさを含んだ声は、消え入りそうなほどのものだったけど……。


「冬実ちゃん」


さっきよりもさらに目を大きく見開いた英二さんには、ちゃんと伝わったんだとわかった。


「今日は本当に嬉しかったんです。だから、もっと一緒にいたい……」


もっともっと、彼に伝えたいことはたくさんある。


だけどきっと、今必要なのは言葉じゃない。


おずおずと伸ばした手で英二さんの左手に触れると、あっという間にグッと引っ張られて、彼の胸の中に飛び込むような形で抱き締められた。


「いいの?……無理、してない?」


耳の横で聞こえた優しい声音には、らしくなく緊張の色が浮かんでいた。



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