センチメンタル*宅配便
まん丸の月が地平線から顔を出した。
辺りがだんだん暗くなり、ゆっくりと高度を上げていく満月を、私たちは初めて出会った日と同じように砂浜に座り眺めていた。
「もうすぐ、月の梯子が現れる」
隣の君が呟いた。
しっかり握った手から君の体温を感じる。
行かないで、傍にいて、頭の中を駆け巡る言葉が口まで到達するのを堪えて、私は月を見ていた。
オレンジ色の大きな満月だった。
浜辺が闇に包まれると、海面から月へと伸びるように月の色に似たオレンジの梯子が現れた。
「もうそろそろ行く時間だ」
繋いだ手を放した君が立ち上がると、パーカーのフードの辺りに手を突っ込み、何やらもぞもぞと動いた。
胸につけたペンダントを外すと君はそれを私の手に握らせた。
君を見つめたままぽかんと口を開けていると、君はにっこりと笑い、「あげる」と答えた。
「これって君にとってすごく大切なものなんじゃないの?」
「大切だからあげるのさ。お姉さんにボクのこと覚えてて欲しいから」
こんなことしなくても私は君を忘れないよ。
そう言いたかったけれど、君が先に口を開いた。
「覚えててよ、僕が遠くクルックポーからお姉さんを思っていること、誰よりもお姉さんの幸せを願っていることをさ」
君は座ったままの私の前で屈むと、にっこりと笑ってキスをくれた。