上司のヒミツと私のウソ
「ひょっとして」
席にもどると、私は正面の席にいる安田にいった。
「企画部のひとって、事務作業が苦手だったりする?」
「めざといね」
安田はパソコンのモニターから眼を離さずにいう。
「あんたは得意そうだね」
「人事部でしたから。前の部署なら、午前中のうちに誰かが総務に連絡してるよ」
「へえー、そうなんだ。うちは、たいていみんなほっとくけどね」
「……ほっといてもなおらない、と私はおもうけど」
「まあね。いよいよ動かなくなったら、誰かが連絡するんじゃない?」
安田はあっけらかんとしている。私は呆れた。
「そんなんで、よく今まで滞りなく仕事ができたね」
「ずっとじゃないよ。事務的なことは情報企画の千葉さんが全部仕切ってたんだけど、彼女、今年の二月に産休に入っちゃって。それから」
ふいに喋るのをやめて、安田が顔をあげて私を見た。不敵な笑いが口元を覆っている。
「千葉さんの穴を埋めてくれるひと、探してたんだよね」
禁煙をはじめて四日目。
離脱症状のピークは乗り越えたものの、煙草を吸いたい気持ちはずっと胸の中にあってなかなか消えない。勤務中はもちろん、自宅に帰ってからも一本も吸っていないのだ。禁煙前は一日に二十本以上吸っていたことを考えると、たった四日でも私にとっては奇跡である。
席にもどると、私は正面の席にいる安田にいった。
「企画部のひとって、事務作業が苦手だったりする?」
「めざといね」
安田はパソコンのモニターから眼を離さずにいう。
「あんたは得意そうだね」
「人事部でしたから。前の部署なら、午前中のうちに誰かが総務に連絡してるよ」
「へえー、そうなんだ。うちは、たいていみんなほっとくけどね」
「……ほっといてもなおらない、と私はおもうけど」
「まあね。いよいよ動かなくなったら、誰かが連絡するんじゃない?」
安田はあっけらかんとしている。私は呆れた。
「そんなんで、よく今まで滞りなく仕事ができたね」
「ずっとじゃないよ。事務的なことは情報企画の千葉さんが全部仕切ってたんだけど、彼女、今年の二月に産休に入っちゃって。それから」
ふいに喋るのをやめて、安田が顔をあげて私を見た。不敵な笑いが口元を覆っている。
「千葉さんの穴を埋めてくれるひと、探してたんだよね」
禁煙をはじめて四日目。
離脱症状のピークは乗り越えたものの、煙草を吸いたい気持ちはずっと胸の中にあってなかなか消えない。勤務中はもちろん、自宅に帰ってからも一本も吸っていないのだ。禁煙前は一日に二十本以上吸っていたことを考えると、たった四日でも私にとっては奇跡である。