上司のヒミツと私のウソ
 うわさって、なんのうわさ?


「西森さんは知らないんじゃねえの」


 三好くんがうんざりしたようにいう。

 女の子のうわさ話が始まると、手に負えないことを知っているらしい。あるいは、普段からしょっちゅう付き合わされているのかもしれない。


「このこと、安田さんにはいわないでくださいね」

 前置きするものの、荒谷さんは今すぐ話したくて仕方がないようだ。好奇心に輝く白い顔を私の近くに寄せると、おもわせぶりに声をひそめた。


「安田さんと矢神課長、付き合ってるみたいなんです」


「……ふーん。そうなんだ」


 とっさに興味がないふりをした。

 内心はひどく取り乱して、頭の中はすこんと真っ白になっていた。


 荒谷さんは、軽くあしらわれたのが不服のようで、さらに真剣な表情になって「ここだけの話ですよ」といった。


「私たち、見たんです。新年会のとき、二人がこっそり抜け出してタクシーに乗り込むところ。ね?」

 体の向きはそのままで、首だけ松本さんを振り返る。松本さんは、戸惑いつつもちいさくうなずいた。
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