上司のヒミツと私のウソ
三月最後の週が明けた。
月曜日の昼休み、私と安田は屋上にいた。久しぶりに気温が上がり、屋上の日だまりにいると全身に春の暖かさを感じた。
コンビニで買ってきたお弁当を食べたあと、安田は私の隣で堂々と煙草を吸った。
不思議なことに、あれほど吸いたくてたまらなかった煙草が、今はどうでもよくなっていた。煙草を吸うのを我慢しているという事実を忘れているときすらあった。
先週末からずっと、私の頭の中はあのうわさに占領されていた。
安田と矢神に気づかれないように、仕事中それとなく二人を観察した。当然ながらべたべたしているわけではないし、社内ではとりわけ仲がいいようには見えなかった。
ただ、観察して明らかになったことがある。
矢神が安田に全幅の信頼を置いているということ。安田が矢神に従順だということ。この二つだった。
新年会ということは、今年のはじめ。私が矢神にプロポーズされたのは二月だ。うわさが真実なら、私は二股をかけられていたということになる。
もしも私たちがなにごともなく二月十四日を迎えて、私が矢神のプロポーズにイエスと答えていたら、どうするつもりだったんだろう?
考えても答えの出ないことを毎日ぐるぐる考え続け、ほかのことはなにも考えられなくなっていた。