上司のヒミツと私のウソ
「もう十年近く入退院を繰り返しているの。三年前にお父さんが亡くなってからは、ずっと彼が介護をしていて……彼、一人っ子だし、近くに親戚がいないらしくて」
隣のテーブルで笑い声が起こった。四人組の若い女の子のグループが、テーブルの上で頭を振りながら笑い話に夢中になっている。
「たぶんよくなることは、ないだろうって」
その先を聞く必要はなかった。あまりにも残酷な現実が、つめたい水のようにじわりと胸を浸して、私はすぐに言葉を返すことができなかった。
結婚するということは、彼の家族になるということだ。
治る見込みのない病人の看護という辛い役割を、これからはミサコちゃんが背負わなくてはならなくなる。多くの女性が持つ華やかで幸せな結婚のイメージは、そこにはない。
「彼がいつまでも結婚を切り出さないのは、私をおもってのことだって、ずっと前から気づいてた。気づいていたのに、私は彼のもとを離れたのよ。結婚を拒んだのは、彼じゃなく私なの」
ミサコちゃんはふんわりと笑った。
「ひどい女でしょ」
ほほえみ返そうとしたけれど、できなかった。
私はミサコちゃんのことをよく知っている。子供の頃から、私が淋しいときや泣きたいとき、ミサコちゃんだけが気づいてくれた。なにもいわず、ただそばにいて寄り添ってくれた。
隣のテーブルで笑い声が起こった。四人組の若い女の子のグループが、テーブルの上で頭を振りながら笑い話に夢中になっている。
「たぶんよくなることは、ないだろうって」
その先を聞く必要はなかった。あまりにも残酷な現実が、つめたい水のようにじわりと胸を浸して、私はすぐに言葉を返すことができなかった。
結婚するということは、彼の家族になるということだ。
治る見込みのない病人の看護という辛い役割を、これからはミサコちゃんが背負わなくてはならなくなる。多くの女性が持つ華やかで幸せな結婚のイメージは、そこにはない。
「彼がいつまでも結婚を切り出さないのは、私をおもってのことだって、ずっと前から気づいてた。気づいていたのに、私は彼のもとを離れたのよ。結婚を拒んだのは、彼じゃなく私なの」
ミサコちゃんはふんわりと笑った。
「ひどい女でしょ」
ほほえみ返そうとしたけれど、できなかった。
私はミサコちゃんのことをよく知っている。子供の頃から、私が淋しいときや泣きたいとき、ミサコちゃんだけが気づいてくれた。なにもいわず、ただそばにいて寄り添ってくれた。