上司のヒミツと私のウソ
 じわじわと胸を浸していくその感情に私はとまどい、あふれ出す前になんとかして消そうともがいた。けれど、それは消えるばかりか、ますます存在を主張して胸を締めつけてくる。


 どうしてだろう。

 どうして、こんなにも会いたいとおもうんだろう。


 裏の矢神に。




 おもえば、付き合っているころは気楽だった。


 いつ本性がばれるかとびくびくすることはあったけれど、眠れないほど落ち込んだり、食欲をなくすほど悩んだり、泣くほど傷ついたりしたことは、一度もなかったとおもう。彼はいつも濃やかで優しかったから。

 でも、矢神が私に見せていない顔があると知ったときから、その顔を見たくてたまらなくなった。どうしても本音を聞き出したいとおもった。それは私のわがままだ。今まで隠してきた私の本性。わがままで身勝手で負けず嫌いな。
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