上司のヒミツと私のウソ
 私が黙っていると、矢神はいらいらしたように煙草を持っていないほうの人差し指でテーブルを叩き始めた。


「たとえあんたがいなくなっても、あの企画は進めるからな」


 え? と私は驚いて矢神を見た。


「あんたがどうおもっているか知らないけど、企画は進める。開発の本間は、俺に嫌がらせしてるだけだ。データを揃えて具体的な案を少しずつ出していけば、納得せざるをえない」

「嫌がらせって……どうしてですか」

「さあ。知らん」

「聞いてみたことないんですか」

「ない」


 矢神は意に介するようすもなく、グラスのお酒を呷った。

 まもなく、律子さんがお盆に料理とお酒とウーロン茶を揃えて運んできた。テーブルの上につぎつぎ出される料理は、どれもおいしそうだ。でも、たしか私は料理の注文をしてなかったはず。
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