上司のヒミツと私のウソ
「どんどん食べて。今日は矢神くんに奢らせるから」

「は?」

 矢神が上目遣いに猛抗議した。律子さんは負けずに睨みかえす。


「どうせ今度も矢神くんが悪いんでしょ。いいじゃない、食事奢るくらい。三十過ぎた男がけちけちしないの」

「なんで勝手に決めつけるんだ」

「先生はなんでもお見通しです」

「もう先生じゃないだろ。それにこれは仕事の話で」

「いいから彼女に謝りなさい。そういえばむかし、中山さんに邪険な態度とってクラスの女子全員から糾弾されたことがあったわよね。少しは学習しなさいよ、あんた」

「あーもう、たのむからむこうに行ってくれ!」

 ぺろりと舌を出して、茶目っ気たっぷりにテーブルを離れる律子さんとは裏腹に、矢神は眉間に深い縦皺を刻んで頬杖をつき、むっつりしている。


「なんか微妙に誤解されてるような気がするが」

 目を伏せたまま、ぼそりという。私は焦った。
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