上司のヒミツと私のウソ
「もう大丈夫です。心配かけてすみませんでした」

 矢神は煙草をくわえたまま表情を変えなかったけれど、わずかにほっとしている気配が伝わってきた。

 心の片隅には、まだあのことを気にしている私が見える。でも、矢神がそれほどまでにいいたくないのなら、聞かなくてもいい。いずれにしても、今となっては終わったことだ。


「あー、お腹すいた。食べてもいいですか?」

 矢神がうなずくのと同時に、私は箸を取り「いただきます」といった。


 それから私たちは仕事の話をした。私はひたすら料理を食べ続けながら、企画部のことをあれこれ聞いた。倉庫整理で下地はできていたので、矢神の話はすんなり頭に入ってきた。


「本間のいうこともわかるけど、俺はやっぱり二十代から三十代の働く女性で正解だとおもう。アンケートの結果でもはっきり出てるし、それを見れば本間も納得するはずだ」

「あの……ものすごく基本的なこと、質問してもいいですか?」

 私がためらいつついうと、矢神は口の端に笑みをはりつけた意地悪そうな顔で「どーぞ」といった。
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