上司のヒミツと私のウソ
「そのあと音信不通になったとおもったら、いきなり大検受けて医学部でしょ。薄情よねえ、恩師に相談もなく」

「そうですよ。俺ずっと矢神さんからの連絡待ってたんですよ」

 矢神がにやにやしているだけで答えないので、二人は不服そうだった。どうやらそのあたりの詳しい事情はこの二人も知らされてないらしい。


 そのとき、携帯電話の呼び出し音が鳴った。

 矢神がジーンズのポケットから携帯電話を取り出し、かけてきた相手を確認してわずかに表情を変えた。

「悪い。ちょっと外す」


 そういって矢神は携帯電話を手に店の外に出ていった。矢神が立ち去ると、おしゃべりで和んでいた空気が緊張したように静まりかえる。


「ねえ華ちゃん。本当に矢神くんと付き合ってないの?」

 ついさっき、ようやく誤解を解く機会を得たので、すかさず矢神との仲を否定しておいたのだ。
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