上司のヒミツと私のウソ
 矢神の予想どおり律子さんはしつこく食い下がってなかなか事実を認めようとしなかったのだけれど、やっぱりまだ信じてないらしい。

「付き合ってません」

 きっぱりと私は断言した。隠す必要もなかった。

「付き合ってましたけど、別れました。今は単なる上司と部下です」

「そっかあ。残念だなあ」


「でも、楽しいですよ」

 私が笑っていうと、律子さんは不思議そうに首を傾げた。


「いまのほうが、付き合ってたころより楽しいです」


 からからと格子戸が開く音がして、矢神が店の中にもどってきた。
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