上司のヒミツと私のウソ
本間課長は資料を見ながら黙り込んでいる。
金曜の夜、矢神と二人で残業して仕上げた資料だ。
閉めきられた狭い部屋の中は、異様な雰囲気で満ちていた。部屋に入った瞬間から、本間課長は一歩も譲らない構えで矢神を睨みつけているし、矢神は微笑を浮かべているものの一度も本間課長を見ようとしない。
そして二人とも、企画者本人である私のことなど無視だ。
月曜の午後のミーティングルーム。出席者は、私と矢神、本間課長の三人のみ。
「ま、確かによくできてる」
ひととおり資料をめくったあと、不本意な感情を声に露わにして、本間課長がぼそぼそとつぶやいた。矢神は当然とでもいうべくうなずく。その直後。
「できすぎで現実味がない」
本間課長はふっと鼻で笑い、資料を乱暴に置いた。そのあとは、もう目を向けようともしない。本間課長が資料を見ていた時間、およそ二分。