上司のヒミツと私のウソ
 二人が部屋を出て行くと、ほっとして肩の力が抜けた。

 緊張していることを悟られないように、いつもどおりにしたつもりだったけれど、説明している最中に何度か息が詰まりそうになった。彼の顔をまともに見ることができなかった。


 私は化粧ポーチを手にして屋上に向かった。

 九階のトイレの前に清掃用のバケツが置いてある。トイレの中をのぞくと、おばさんがモップを洗っているところだった。

「鍵ならあいてるよ」


 行ってみると、たしかに屋上の扉は開いていた。


 空は曇っていたけれど寒くはなかった。肌に触れる風の匂いと柔らかさが、仄かに春の訪れを感じさせる暖かい日だった。


 屋上の真ん中に立ったまま、私は化粧ポーチから煙草を出してくわえた。

 ほんの少しかがんで左手で風を遮り、ライターで火をつける。

 ため息のようにゆっくりと息を吐くと、屋上の広い空間の私のまわりだけに紫煙と煙草の匂いがたちこめる。
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