上司のヒミツと私のウソ
「彩夏は弟のことが心配でしょうがないんです。昔からなにかと世話を焼いていましたから」

 まるで他人ごとのように冷めた口調だった。

「どこからお話しましょうか」





 適度に冷房が効いていた車内を出ると、むっとした外気に包まれた。


 車道を走っている間、窓の外に注意を向ける余裕がなかった私は、車を降りてもそこがどこなのかさっぱりわからなかった。

 大通りからは外れているのだろう。

 あたりは静かで、人通りもなかった。周囲を見回すと立派な屋敷が建ち並んでいる。閑静な高級住宅街といったところだ。

「どうぞ」

 彼に連れて行かれたのは、住宅街の一角にある一軒家のレストランだった。

 緑色の片流れ屋根がかわいらしく、高級料理というよりはおしゃれなカフェレストランといった雰囲気だ。
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