上司のヒミツと私のウソ
「あなたと突然別れたのは、そういう理由からだったんですよ」


 あるいは、と彼は残酷な言葉を続けた。


「彩夏が僕と婚約したことを知って、僕に嫉妬したのかもしれません。彼はずっと彩夏に横恋慕していましたから」


 弟に病院を継ぐ資格はない。

 矢神隼人は最後に語調を強くしてそういい切った。そして二度と両親や親族の前に現れないことを誓わせる、と。

「あなたにも協力していただきたいんですよ」

 料理を食べ終えると、彼は片手でウエイターを呼んで皿を片付けさせた。

 そしてまたテーブルの上に左手で頬杖をつく。


「私になにを」

「弟を説得してほしいんです」

「……」


 私の皿の料理はいっこうに減らない。

 喉が締め付けられるように息苦しく、胃がきりきりと痛んだ。

 私は食べることを諦めてナイフを置いた。
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