上司のヒミツと私のウソ
「華?」

 ミサコちゃんのやさしい声は、いつも私の涙腺をゆるませる。

 そして、ミサコちゃんは私が泣くことを無条件に許してくれる。だけど、今は泣くべきじゃないこともわかっている。


 私は胸に抱いたクッションに顔をうずめ、滲んでくる涙をこらえた。


「どうしたの?」


 そういえばミサコちゃんは、今までにもよくその言葉を口にした。ためらいもなく。

 私はそのひとことに何度も救われてきたけれど、私自身が誰かにいったことはあっただろうか。

 なかったような気がする。


 私はクッションを抱いたまま起き上がり、テーブルの上の冷えたオレンジジュースを一気に飲み干した。

「なんでもない」

 まだ笑えることに、ほんの少し自身を持てた。ミサコちゃんは心配そうに私の表情をくまなく窺っている。

「本当に?」
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