上司のヒミツと私のウソ
「まあ、私には関係ないけど」

 ばっさり切り捨てて、安田はさっさと目の前の仕事にもどった。


 午後になると、睡眠不足のせいで頭がぼうっとして、仕事に集中できなかった。

 三時を過ぎたころ、限界を感じた私は化粧ポーチを持って屋上に向かった。

 十代や二十代のころなら、徹夜した次の日でもまったく平気でいられた。けれど、年をとるとごまかしがきかない。

 目の下にはくっきりと黒いクマが浮かんでいるし、化粧乗りが悪くて、いかにも疲れた顔をしている。


「あーやだやだ」

「なにが嫌なん?」


 びっくりして顔を上げると、非常階段の上から本間課長がにやにやしながら降りてくる。

 しっかりひとりごとを聞かれてしまったようだ。


「矢神の悪口やったら、いくらでも付き合うけど?」

 本間課長は、冗談とも本気ともとれる口調でそんなことをいい、にこにこ笑っている。

「いえ、あのー、そういうことじゃありません」

「なーんや、残念やなあ。いかにもストレス溜まってます、って顔してるから、てっきりそうかとおもったのに」

「……そんなにひどいですか、私の顔」
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