上司のヒミツと私のウソ
 化粧室でチェックしてくればよかった、と本気で後悔していると、本間課長がけらけら笑いだした。冗談だったらしい。

「人が悪いですよ」

「ごめんごめん。西森さん真面目やから、なんかついからかいたくなるんよなあ。で、おたくの課長は元気?」

「大阪に出張中です」


「ああ、例の件か」


 間を置かずに返ってきたその返答に、私は違和感を覚えた。


「例の件って?」

 本間課長のこわばった表情がまずい、といっている。

 私は階段を上り、本間課長の立っている場所と同じ位置に並んで立った。


「例の件ってなんですか?」

「えーっと」


 本間課長は弱ったなあといった顔をして、階段の手すりに肘を置く。私はさらに一歩、彼に詰め寄った。

「今度のプロジェクトで、なにか問題でも起きたんですか?」
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