上司のヒミツと私のウソ
 私は携帯電話を握りしめたまま、画面に表示されている番号を睨み続けていた。

 もう一方の手でテレビのリモコンを探り、音楽番組を流していたテレビの電源を落とした。とたんに部屋の中が静かになる。


 息を吸い、発信ボタンを押した。


 電話を耳に押し当てると、プッ、プッという音が続いている。

 呼び出し音に変わったけれど、三コール待っても誰も出ない。

 四コール。五コール。切ろうとした。

 そのとき、呼び出し音が途切れた。


「西森?」


 矢神の第一声は予想に反するものだった。


 なんで?

 私の番号なんて、とっくに消しているだろうとおもっていた。

 この反応は不意打ちだ。用意していた言葉もろとも、頭の中が吹き飛んで真っ白になった。


「なにかあったのか?」

 わずかに緊張を帯びた矢神の声が聞こえてきた。

 私は黙りこんでいたことに気づき、ようやく我に返る。
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