上司のヒミツと私のウソ
「ま、しょーがないですね」などと、心配したこっちが拍子抜けするほど、さばさばしているのだ。

 そういえば以前、ただの暇つぶしで書いた企画書だと話していた。案外、こちらがおもうほど深い思い入れはなかったのかもしれない。


 あのことにしたってそうだ。


 こっちは死に物狂いの告白だったというのに、西森は意に介するようすもなく平然としている。

 結婚を断るために利用しようとしたなどと聞かされたら、ふつう激怒するなり非難するなりするとおもう。あるいは二度と顔を見たくないと徹底的に避けるか。

 しかし、西森はどちらもしなかった。

 翌日もまったく変わらず、まるでなにも聞かなかったかのように、今までどおりの態度だったのだ。


 どういう女なのかとおもう。


「最近あすなろに行ってませんけど、マスターと律子さん元気ですか?」

 西森が思い出したようにいった。
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