上司のヒミツと私のウソ
 社の連中に西森の本性がバレようがどうしようが俺には関係ないことだが、一応上司でもあるし、できるなら厄介ごとは避けたい。

──でも、まあ。

 西森華がどういう女であろうとも、この無防備なまでに自由な空の下で過ごす限られた時間を、どこかで楽しんでいる自分がいることは認める。




 噂をすればなんとやらで、ちょうど残業を終えて会社を出る直前、律子さんから電話がかかってきた。

 緊急事態だから、今からすぐ「あすなろ」に来いという。それだけ早口でまくしたて、電話は切れた。

 なんなんだと腹を立てつつ、終電を乗り継いであすなろに向かう。店に着いたときにはすでに午前一時をまわっていて、閉店時間をとっくに過ぎていた。
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