上司のヒミツと私のウソ
 できれば隼人に接触することは避けたいのだが、しかたがない。

 それに、俺が酔っぱらった彩夏を隼人のマンションに送っていけば、それはそれでさらにややこしい誤解を招きそうな気がする。

 隼人を呼んでここに来てもらい、この現状を目の当たりにすれば、俺にはどうしようもなかったことを理解してもらえるに違いない。


 ちょっと待て。

 どうして俺がびくびくする必要があるんだ? いきなり押しつけられて迷惑を被っているのはこっちだぞ。


「……帰りたくないの」

 ふいに彩夏がいった。


「隼人と喧嘩したのか」

「そんなんじゃない」

「じゃ、どうしたんだよ」


 彩夏はソファに横になったまま、ぼんやりと俺を見た。

 ウェーブのかかった長い栗色の髪が、ソファの上にふわっと広がっている。

 当惑する俺をしばらく眺めたあとで、彩夏はだるそうに体を起こした。


「ごめん。迷惑だよね」
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