上司のヒミツと私のウソ
「どうしたんですか、こんな時間に」


 抑揚のない低い声が、今日は冷たく聞こえる。

「謝りたくて」


 なにもかも打ち明ける覚悟はできていた。

 かれを失いたくなかった。

 こんなにも強くおもうことに、私自身が驚いていた。


「私、あなたに隠していることがたくさんあるんです。全部、話しますから。本当のこと」

「企画部に移りたくて僕を利用しようとしたこととか?」

「……」


「西森さんは、素直なひとですね」


 俯いていた顔をあげると、彼が笑っていた。

 今までに見たこともない、胸が冷たくなるような酷薄な微笑だった。濁流のように不安が流れ込んできた。


「あの、これ、受け取ってください」

「なんですか」

「チョコレートケーキです。今日はバレンタインだから」
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