上司のヒミツと私のウソ
 今回のプロジェクトの指揮をとる販売企画課の新井課長が、ぼそぼそと小声で報告を始めた。

 会議室のテーブルを囲む出席者の面々は、誰ひとりとして顔を上げることなく、ぼんやりと手もとの資料を眺めている。


 全社をあげて取り組むはずだった新ブランド「フレーバーティーシリーズ」の開発がお蔵入りになってから、どうも社内に活気がもどらない。

 この打ち合わせも惰性で進めているような印象が拭えず、各自の進捗報告だけではやばやと終了した。


「矢神課長」


 会議室を出ようとしたところで、呼び止められる。振り向くと開発部の本間裕章がにやけた顔で立っていた。

 彼は今回のプロジェクトのメンバーではなく、たまたま今日は欠席している開発担当者の代理で出席していた。

 会議中から意識的に無視していたのに、こちらの意向はやつにはつたわらなかったらしい。
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