上司のヒミツと私のウソ
 春にキャラメルミルクティーの宣伝企画について激論を交わして以来、本間は妙になれなれしい。社内でもやたらと声をかけてくる。

 以前なら、廊下ですれ違っても目を合わせようとせず、こちらから声をかけない限り、挨拶すらろくにしないという強硬な態度を取っていたのだが……どちらにしても甚だ迷惑である。


 本間は、わざとらしく真剣な表情を装っている。


「近江飲料のアーモンドキャラメルティー、やっぱり相模詩乃に決まったみたいやな」

「へえ。そうですか」

 もちろん知っている。だが、その話を今ここで本間と続ける気はない。


「そうですかって、お前、気にならんのか」

「もう終わった話ですから」


 一言で片付けると、本間のにやけた顔がこわばった。


「冷たいやつだな。部下の花道を根こそぎ潰されたってのに、なんともおもわんのか」

 適当にあしらって立ち去ろうとしたが、つぎのひとことで動きかけた足が止まった。


「俺はあきらめないぞ。西森さんとも約束したしな。いつか、絶対にフレーバーティーを復活させるって」

「西森さんと……?」
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