上司のヒミツと私のウソ
 まさか、本間の口から西森の名前が出てくるとはおもわなかった。前回はさんざん西森の企画を嫌がり、反対していたではないか。


「西森さんて、ええ子やなあ」

 本間はころっと関西弁になり、八重歯を見せてにこにこと笑った。


「何年か前に、『一期一会』のプロジェクトの一部始終を、どっかの局がドキュメンタリー番組にして深夜に流したことがあったやろ。西森さん、あの番組を見てうちの会社を受けたんやってなあ。なんかよっぽど感動したらしくて、そのときのこと根ほり葉ほり聞かれたわ。ま、悪い気はせんけど」


 西森が『一期一会』にこだわっていることは、俺だってもちろん知っている。最初に西森と言葉をかわしたのも、『一期一会』のポスターの前だった。

 西森は、どういうつもりでそんな話を本間にしたのだろう。そもそも、ふたりはいつのまに仲良くなったんだ?


「やる気のある部下は大事にせえよ」

 ぽん、と俺の肩を叩き、皮肉めいた笑顔を向けて、本間は会議室を出ていった。
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