上司のヒミツと私のウソ
 隼人から携帯に連絡が入ったのは、翌日の昼休み直前だった。

 冷房の効いたビルを一歩出たとたん、蒸し暑い空気に包まれる。夏の陽射しがアスファルトに濃い影を落とし、木立から蝉の声が降り注ぐ。


 呼び出されたのは会社のすぐ近くにあるコーヒーショップで、隼人は奥の席に座ってコーヒーを飲んでいた。


 珍しくスーツを着ていない。

 ジーンズにベージュのジャケットというラフな服装で、色の濃いサングラスをかけている。


「会社には来るなといったはずだ」

「だから、会社には行ってない。これでも気を遣ったつもりだが?」


 隼人は顔を上げずにいった。声の調子ですぐにわかってしまう。隼人はいらついている。

 俺はしかたなく向かいの席に腰掛け、ウエイトレスが運んできた水を一気に飲んだ。

 咽が渇く。嫌な予感がした。


「彩夏が一昨日の晩から帰らない」


 隼人が俺を見る。


「居場所を知らないか」

 抑揚のない低い声は落ち着き払っているように聞こえるが、そうではない。
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