上司のヒミツと私のウソ
 俺は動こうとしない彩夏の手を取って、強引に玄関に引っ張りこんだ。ドアを閉めると、彩夏がほっとしたように肩を下ろすのがわかった。


「昨日はどこにいたんだ?」

 彩夏は答えない。

「隼人が探してるぞ」

「会ったの?」


 瞬時に顔を上げる。


「おまえの居場所を聞かれたんだよ。喧嘩するのは勝手だけどな、俺を巻きこむな。迷惑だ」

「……そうだよね」


 彩夏は子供のようにしょんぼりとうなだれる。両手は、まだしっかりとボストンバッグを握りしめている。

 俺は靴を脱いで部屋に上がると同時に、携帯電話を取り出した。


「あいつに連絡するけど、いいか?」

「嫌!」


 彩夏が叫んだ。

「お願いだから……隼人を呼ばないで」
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