上司のヒミツと私のウソ



 二月も残りわずかという時期になって、おもいがけず移動の話が決まった。

「よかったじゃない。西森さん、企画部に行きたかったんでしょう」


 昼下がりのミーティングルームで、佐藤部長から切り出された。心臓を割られるような思いだった。声が震えださないように必死でがまんして、私はいった。

「でも、どうして急に」

「西森さんの企画書が谷部長の目に留まったらしいよ」

「企画書……?」


 思い出した。

 昨年の夏に、企画部が社内で企画を募集しているのを社内報の記事で読んだ。


 部署や肩書きを問わず誰でも受け付けるというので、私もひそかに提出していた。もう半年以上も前のことで、すっかり忘れていたのに。


「私の企画が……ほんとですか?」

「うん。三月一日付けで宣伝企画課に配属が決まったから、それまでに引き継ぎのほう、しっかりたのむよ」

「えっ」


 宣伝企画課。

 それはまずい。


「あの、今じゃないとだめですか?」
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