上司のヒミツと私のウソ
「前にもいったけど、企画部は、あんたが前にいた人事部とはちがう人種が住む場所なんだよね」

 ふう、と煙を吐き出す。

 腕を組んで、目の前にひろがる真夏の青空に目を細める。


「自分の企画が認められて、世の中に出て、世の中のひとたちをあっと驚かせたい。いつかは、大きなプロジェクトを指揮する立場に立ちたい。そのために誰もがチャンスを望んでる。そういう場所なの」


「……そんなこと、知ってる」


「あんたは矢神課長に夢中だから、肩入れする気持ちもわかるけど、みんなにとっては課長だってライバルのひとりなわけ。同情はするけど、最後は自分のチャンスを優先する。それが普通。課長自身もそうしてここまできたんだし、あんただって、矢神課長のこと利用して企画部に来ようとしてたんだから、わかるんじゃないの?」


「わからない」

 私は安田を睨み返した。

「私がここに来たかったのは──私が手に入れたかったのは、そんなことじゃない」
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