上司のヒミツと私のウソ
 その場を立ち去りかけて、ふと気づき、足を止めた。

「いっとくけど、夢中になんかなってないから。肩入れしてるわけでもない。変な勘違いしないでよ」

「あっそ」

 安田は煙草をくわえたまま、私を見下ろすように唇の端だけでわらった。


 私は足早に屋上をあとにした。

 なにがこんなにくやしいのか、自分でもよくわからない。


 プロジェクトはひとりでは動かせない、と矢神はいった。

 でも結局、みんな自分のことしか考えていない。

 矢神ひとりが責任をとらされて北海道に飛ばされても、誰もなんともおもわないのだ。


 それが当たり前?

 それが現実?

 納得できない。


 もやもやした気持ちを抱えたまま六階の執務室にもどると、なにやら騒がしい。
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