上司のヒミツと私のウソ
 いつも問題になるのはそこなのだと、以前安田から聞いたことがある。

 開発か、企画か。課長同士もそうなら、部署自体も犬猿の仲らしい。


「部署は関係ありません。今回は忘れてください」


 本間課長がきっぱりといい放った瞬間、質問した進藤さんも、列席している面々も、意表を衝かれたように静まりかえった。


「ほかに質問がなければ、以上でキックオフミーティングを終了します」


 誰もが釈然としない顔つきで、ぞろぞろと会議室を出ていく。

 私はメモをとるふりをして荒谷さんに先にもどるよう促し、会議室に残った。


 矢神と本間課長は、まだなにか小声で話している。

 本間課長が私に気づき、八重歯を見せてにっこり笑いかけた。つられて私もほほえんでしまう。

 本間課長は「またあとで連絡する」とぶっきらぼうに矢神に告げて、「西森さん、がんばろうね」と、こっちは笑顔。なんて器用な。


 本間課長が出て行き、会議室の扉が閉まると、残されたのは私と矢神ふたりきりになった。
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