上司のヒミツと私のウソ
 俺もパイプ椅子に腰を下ろして指に挟んだ煙草を見つめていたが、開き直ることにした。


 晴れた空にゆっくりと煙を吐き出す。

 まったく意に介さない安田の態度を見ていると、こうしているのが自然におもえてくる。


「西森と一緒じゃなかったのか」

「コンビニには一緒に行きましたけど、ここに来ると煙草を吸いたくなるからって食堂に行きました」

「西森はまだ禁煙を続けてるのか?」

「今までのは減煙ですよ。課長の前で吸わないようにしてただけ」

「え?」


 背後でクッと小さく笑うのが聞こえた。

「でも、今度こそ禁煙するんですって。プロジェクトの願掛けだかなんだか知らないですけど、あのひとの考えることってほんとうにまっすぐで、はたから見てるとおもしろいですよね。本人は大まじめなんですけど」


「……そうだな」


 ふと、おもった。

 それなら、西森は今まで、どうしてわざわざここに来ていたんだろう。
< 427 / 663 >

この作品をシェア

pagetop