上司のヒミツと私のウソ
「ま、そこがいいとこでもあるんですけどね」

 いつもの低いクールな声が、わずかに弾んで聞こえる。


 安田は外見で判断されやすい。

 金色に近い茶色の髪に、ひと目を引く派手な化粧。

 わざとなのか無意識なのか、いつも全身から不機嫌そうなオーラを発しているため、周囲から誤解されることが多い。

 だが、実は意外と堅実に仕事をこなすし、面倒見がよくて、昔でいう姉御肌なところもある。


「安田は西森のことを気に入ってるみたいだな」

「はたから見てるとおもしろい、といっただけですけど」


 間髪入れず、投げやりな冷めた声で応酬する。

 こういうときの安田は、わざと突き放すようないい方をするのだ。つまり照れ隠し。

 あのことを切り出すのはいましかない、と突然頭の中でひらめいた。


「『RED』の広告を西森にやらせようとおもってる」

 煙草を消してパイプ椅子から立ち上がり、安田を振り返った。
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