上司のヒミツと私のウソ
 ペットボトルの麦茶を片手につかんで口の前で止めたまま、安田は数秒だまって俺を見つめた。

 数秒後、ペットボトルに口をつけて麦茶を飲む。


「無理ですよ」

 当然とばかりにいった。


「経験のない西森さんに広告を担当させるなんて。どう考えても無茶です」

「だれが西森ひとりに担当させるといった」

「だって、うちから『RED』に参加してるのは西森さんだけじゃないですか。それとも補充するんですか」

「まあな」

「そのほうがいいでしょうね。佐野くんたちの機嫌もなおるんじゃないですか。誰ですか。佐野くん? それとも三好くん?」


 質問しておいて、安田は割り箸を握る手を忙しそうに動かし弁当の具をどんどん口に放りこむ。興味も関心もないといったようすだ。


「安田」


 しばらく口を動かしていた安田は、弁当を平らげると物憂さそうに目を上げた。
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