上司のヒミツと私のウソ
 福原はすぐに俺に気づいて、「じゃあ、また」といい残してそそくさと立ち去る。西森は、俺を見てあからさまにほっとした顔をしている。

 西森のぬるい態度を見ていると、無性にいらいらした。


「だから、適当にあしらえっていってんだろ」


 西森はむっとして顔をそむけ、「普通に話をしていただけです」とつんけんした態度で執務室に入っていく。

 俺にはあっさりそういう態度をとるくせに、なぜ福原にはできないのかとおもう。





 帰り道、彩夏から携帯にメールが送られてきた。

 結婚式の日どりが決まったという知らせだった。その足で「あすなろ」に立ちよることにした。


 律子さんのもとにも知らせが入っていたらしい。


「さびしい?」

 律子さんがカウンターから身を乗り出して、甘ったるい猫なで声を出す。

 さびしいとはおもわなかった。
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