上司のヒミツと私のウソ
 今まで、俺はどのくらい西森と距離をとっていたのだろう。

 これ以上近づくには──さて、どうしたものか。





 本間裕章は油断ならない男である。


「西森さんのおかげや」

「そんなことないですよ」

「あんだけの資料、よう集めたなあ」

「ほかにやることなかったし……」

「大変やったやろ」

「そうですね。でも少しは役に立ったみたいでうれしいです」

「少しどころか、西森さんの資料を見て『べにしずく』の存在を知ったんやで。あの小さなスクラップ記事を見たとき、『RED』の原料はこれしかない、とおもってな」


 『RED』の定例ミーティングが行われた直後の会議室。

 残っているのは本間と西森と俺の三人だけ。

 会議室の片隅でノートパソコンを片付けている俺には見向きもせず、ドア付近で立ち話をするふたりの会話は弾む一方である。
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