上司のヒミツと私のウソ
 今日の午前中、『RED』の定例ミーティングが始まる時間になっても、西森だけが会議室に現れなかった。


 本間が呼んできてくれと頼んでも誰ひとり席を立とうとせず、聞こえないふりをした。

 二十分後、西森があわてたようすで会議室に駆けこんできたときでさえ、全員知らん顔で話し合いを中断しようともしなかった。


「なんや、急ぎの用でも入ったんか?」


 本間が気を利かせて、その場の空気をあたためるような軽い関西弁を使って尋ねた。

 西森は硬い表情のまま、申し訳なさそうに「すみません」と短く答え、いちばん隅の空いている席に着く。

 そのとき、女性メンバーの数人が、うつむき加減に唇の端で笑っているのが目に入った。


 会議が終了するまで、西森はひとことも発言しなかった。

 ここまで深刻になるとは予想していなかった。


 自分が間違った行動をとったとはおもわないが、少なくとも俺の言動が原因でこの事態を招き寄せたことは間違いない。

 会議が終わったあとで本間を呼び止めた。
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